B型肝炎訴訟とは?給付金制度ができた歴史と手続の流れ・期限
B型肝炎給付金の請求期限は
2027年3月31日です

監修 大西 亜希子 弁護士

B型肝炎訴訟とは?
B型肝炎訴訟とは、幼少期に受けた集団予防接種等(予防接種またはツベルクリン反応検査)が原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方々が、国に対し損害賠償を求める訴訟です。
一定の要件を満たすB型肝炎ウイルスの感染被害者の方は、訴訟を提起し国と和解をすることで、病態に応じた給付金を受け取れます。
なおB型肝炎訴訟は、いわゆる「勝ち負けを争う」ものではありません。
国の責任を認めた基本合意の内容に基づいて、「給付金の支給要件を満たしていることを認めてもらう」ための手続です。
B型肝炎訴訟のこれまでの歩み
以下では、B型肝炎訴訟やB型肝炎の給付金制度がどのように始まったのか、ご紹介します。
| 年代 | できごと |
|---|---|
| 1948年(昭和23年) |
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| 1953年(昭和28年) |
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| 1958年(昭和33年) |
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| 1988年(昭和63年) |
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| 1989年(平成元年) |
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| 2006年(平成18年) |
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| 2008年(平成20年) |
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| 2010年(平成22年) |
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| 2011年6月(平成23年) |
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| 2012年1月(平成24年) |
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| 2015年3月(平成27年) |
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| 2016年5月(平成28年) |
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| 2021年6月(令和3年) |
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| 2026年1月(令和8年) |
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①予防接種の強制
1948年7月、感染症の発生やまん延を予防するために「予防接種法」が施行されました。
これにより、すべての日本国民・住民は、集団予防接種等を受けることを強制されることになりました。
②B型肝炎ウイルスの感染拡大
集団予防接種等が強制されたことで、日本国内では、さまざまな感染症のまん延を防ぐことができました。
一方で、集団予防接種等の管理体制には問題があり、注射器(注射針や注射筒)の使い回しが行われていたのです。
集団予防接種等において、B型肝炎ウイルスへの感染を防ぐためには、注射針はもちろん、注射筒も被接種者(予防接種を受ける人)ごとに交換する必要があります。
しかし、国は早い段階でこの事実を認識していたにも関わらず、対策を行わなかったのです。
国が被接種者ごとの注射針の交換を指導したのは1958年、注射筒の交換まで徹底する完全な対策を行ったのは1988年になってからのことでした。
そのため、本来は感染症を防ぐための予防接種をきっかけに、B型肝炎ウイルスへの感染が拡大してしまったのです。
③感染被害者の方による訴訟の提起
1989年、勇気ある5名の感染被害者の方が、国の責任を追及する訴訟(裁判)を起こしました。
17年にもおよぶ長く厳しい争いの結果、2006年6月に原告である5名の方々は国の損害賠償責任を認める最高裁判所の判決を勝ち取ります。
これをきっかけとして、全国のさまざまな地域で続々とB型肝炎に関する集団訴訟が提起されました。
④B型肝炎の給付金に関する法律の施行
集団訴訟を経て、2011年6月28日には、感染被害者の方全員を対象とした救済に向けて、国と原告団・弁護団の間で認定要件や金額などを取り決めた「基本合意書」が成立しました。
さらに2012年1月13日には、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法(特措法)」が制定されました。これが、「B型肝炎の給付金制度」の始まりです。
このようにして、国はようやくB型肝炎ウイルスへの感染被害を発生・拡大させた責任を認め、感染被害者の方の救済に向けて動きだしたのです。
⑤給付金の請求期限の延長
2012年1月13日に「特措法」が施行された際、B型肝炎給付金の請求期限は2017年1月12日(施行日から5年間)までとされていました。
しかし、2016年5月の時点で提訴者(訴訟を提起した方)の数は、政府が見込んでいた救済対象者の数(約40万人以上)に遠くおよばなかったのです。請求期限は2021年まで(5年間)延長されました。
さらに、2021年1月末の時点でも数多くの未提訴者がいると考えられたため、請求期限は2027年3月31日まで再び延長されました。
B型肝炎訴訟の和解状況
法務省によれば、2026年1月1日時点において、B型肝炎訴訟の提訴者数の累計は14万5,393人、和解が成立した原告数の累計は12万1,098人です。
約40万人以上いるとされている感染被害者の方のうち、和解に至った方は約30%にとどまっており、救済はまだまだ道半ばであると言わざるを得ません。
感染被害者の方のなかには、ご自身が給付金の受給対象であることをご存じない方や、いまだにB型肝炎ウイルスに感染していることを知らずに過ごされている方も大勢いらっしゃいます。
B型肝炎訴訟で給付金を受け取れる対象者の方
以下の要件に当てはまる方は、B型肝炎訴訟を提起し国と和解することで、給付金を受け取れます。
B型肝炎給付金の対象者別の受給要件
| 受給対象者 | 受給要件 |
|---|---|
| 一次感染者 |
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| 二次感染者 (母子感染者) |
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| 二次感染者 (父子感染者) |
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| 三次感染者 |
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これらの要件を満たす受給対象者ご本人が亡くなっている場合には、ご遺族の方が給付金を請求できます。
B型肝炎訴訟を起こすメリット・デメリット
集団予防接種等でB型肝炎ウイルスに感染した方が、訴訟を起こすメリットとデメリットは以下のとおりです。
メリット
B型肝炎訴訟を起こす最大のメリットは、和解できれば、病態に応じ最大3,600万円の給付金を受け取れることです。
B型肝炎は、慢性化すると「完全にウイルスを排除すること(完治)が難しい」とされています。
そのため、定期的な検査や治療を続け、病態を進行させないことが重要です。
しかし、検査や治療には高額な費用がかかることも少なくありません。
訴訟を起こし、給付金を受け取ることができれば、お金の心配をせずに治療に専念できるようになります。
デメリット
B型肝炎訴訟を起こすデメリットは、以下の2つです。
- 書類取得や検査などに費用がかかる
- 訴訟の準備や手続に手間がかかる
ただし、裁判を起こして国と和解することができれば、B型肝炎給付金とは別に国から検査費用の一部などが支給されます。
また、弁護士に依頼すれば、資料収集や書類作成、請求手続などを任せられるため、負担を減らすことが可能です。
B型肝炎訴訟で給付金を受け取る流れ

訴訟を提起しB型肝炎の給付金を受け取る大まかな流れは、以下のとおりです。
必要書類の収集
訴訟を起こすためには、まずご自身が「給付の要件を満たしていること」を証明する書類を集めなければなりません。たとえば、以下のような書類が必要です。
- B型肝炎ウイルスへの持続感染を確認できる血液検査結果
- カルテなどの医療記録
- 母子健康手帳または予防接種台帳 など
このほか、ご状況によっても必要な書類は異なります。
訴状の作成
必要書類が揃ったら、訴訟を提起するために訴状を作成します。
訴状とは、裁判を起こす人が、相手方への言い分を記載して裁判所に提出する書類のことです。
B型肝炎訴訟においては、国に対して給付金の支払いを求めることなどを記載した訴状を作成します。
裁判所への提訴
訴状を作成したら、集めた証拠資料とともに、裁判所へ提出し訴訟を提起します。
B型肝炎訴訟の場合、お住まいの地域や、集団予防接種等を受けた地域を管轄する裁判所などで提訴が可能です。
和解協議・和解
提訴書類が受理されると、証拠資料をもとに国によって「給付金の支給要件を満たしているか」の確認(審査)が行われます。
このとき、資料の内容に不足がある場合は、追加の資料提出など対応が必要です。
支給要件を満たすことが確認されると、和解が成立し、「和解調書」が作成されます。
なお、弁護士に依頼した場合は、裁判所への出廷や国とのやり取りを弁護士が代わりに行います。
そのため、原則としてご本人が直接裁判所へ足を運ぶ必要はありません。
給付金の請求
和解成立後は、「社会保険診療報酬支払基金」に対して、給付金を請求する手続が必要です。
和解調書などの必要書類を提出すると、審査を経て、指定した口座に給付金が振り込まれます。実際に給付金が振り込まれるまでには、請求から1~2ヵ月程度かかることが多いです。
B型肝炎訴訟を起こす期限
B型肝炎訴訟には、訴訟を起こす期限(提訴期限)が定められています。
現在のところ、提訴期限は2027年3月31日までです。
なお、手続に必要な書類の収集には、時間がかかることも少なくありません。 給付金の額は病態に応じてあらかじめ定められていますが、感染・発症から20年が経過すると、受給できる金額が減額されてしまいます。
そのため、できるだけお早めに訴訟の準備を始めることをおすすめします。
B型肝炎訴訟に関するよくある質問
B型肝炎の訴訟について、お客さまからよく寄せられるご質問にお答えします。
なぜ給付金を受け取るために訴訟が必要なのですか?
以下の2つの理由から、訴訟が必要になります。
①給付金の請求手続に必要な「和解調書」を取得するため
B型肝炎の給付金は、国の過失(集団予防接種等における注射器の連続使用)によって生じた損害に対する賠償金としての性質を持っています。
給付金を支給するための法律(特措法)では、社会保険診療報酬支払基金への給付金請求にあたって、国との和解内容を記載した「和解調書」の提出が必要とされています。
この「和解調書」を得るために、裁判所に訴訟を提起し、国との間で和解を成立させる必要があるのです。
②感染原因が「集団予防接種等」であることを個別に確認するため
B型肝炎ウイルスには、母子感染や性行為による感染など集団予防接種等以外の感染経路もあります。
そのため、お一人お一人について「集団予防接種等における注射器の連続使用が感染の原因である」ことを、証拠書類に基づいて裁判所の仲介のもとで確認する手続が必要なのです。
ただし、ここでいう「訴訟」は、一般的にイメージされる勝ち負けを争う裁判とは異なります。国がすでに責任を認めた「基本合意書」に基づき、給付金の支給要件を満たしていることを確認するための手続です。
原則として、ご本人が裁判所に出廷する必要はありません。
訴訟から和解までの期間はどれくらいですか?
訴訟を提起してから和解までにかかる期間は、およそ1年半~2年が1つの目安とされています。
ただし、収集した資料の量や内容、状況などによっても異なります。
B型肝炎訴訟で和解できる確率はどれくらいですか?
2026年1月1日時点で、これまでに訴訟を起こした方のうち約83%(※)はすでに和解しています。
また、残りの約17%には審査中の方も含まれるため、手続が終了したケースに限定すれば、和解できる確率は約83%より高くなります。
訴訟を起こした方の多くは、和解できているということです。
※法務省が発表しているB型肝炎訴訟の提訴者数(14万5,393人)と、和解した原告数(12万1,098人)から算出。
B型肝炎訴訟で和解できないことはありますか?
証拠資料が不足しているなどの理由で、給付金の受給要件を満たすことを証明できない場合、和解できないおそれがあります。
そのため、少しでも手続に不安があれば、弁護士に相談することをおすすめします。
B型肝炎訴訟は自分でもできますか?
できます。
ただし、訴訟の手続には法的な知識や複雑な判断が必要になることも少なくありません。
すべてご自身で対応しようとすると、想像以上に時間や労力がかかります。
そのため、少ない負担でスムーズに給付金を受け取りたいのであれば、弁護士に依頼するのがおすすめです。
B型肝炎訴訟の手引きとは何ですか?
「B型肝炎訴訟の手引き」とは、厚生労働省がB型肝炎訴訟を個人でも円滑に行えるように作成した解説書です。
厚生労働省のホームページで公開されており、誰でも読むことができます。





