B型肝炎訴訟とは?これまでの歩みや給付金を受け取るための手続の流れ
監修 大西 亜希子 弁護士

B型肝炎訴訟とは?
B型肝炎訴訟とは、幼少期に受けた集団予防接種等(予防接種またはツベルクリン反応検査)が原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方々が、国に対し損害賠償を求める訴訟です。
一定の要件を満たすB型肝炎ウイルスの感染被害者の方は、訴訟を提起し国と和解をすることで、病態に応じた給付金を受け取れます。
なおB型肝炎訴訟は、いわゆる「勝ち負けを争う」ものではありません。
国の責任を認めた基本合意の内容に基づいて、「給付金の支給要件を満たしていることを認めてもらう」ための手続です。
B型肝炎訴訟のこれまでの歩み
以下では、B型肝炎訴訟やB型肝炎の給付金制度がどのように始まったのか、ご紹介します。
| 年代 | できごと |
|---|---|
| 1948年(昭和23年) |
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| 1953年(昭和28年) |
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| 1958年(昭和33年) |
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| 1988年(昭和63年) |
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| 1989年(平成元年) |
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| 2006年(平成18年) |
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| 2008年(平成20年) |
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| 2010年(平成22年) |
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| 2011年6月(平成23年) |
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| 2012年1月(平成24年) |
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| 2015年3月(平成27年) |
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| 2016年5月(平成28年) |
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| 2021年6月(令和3年) |
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①予防接種の強制
1948年7月、感染症の発生やまん延を予防するために「予防接種法」が施行されました。
これにより、すべての日本国民・住民は、集団予防接種等を受けることを強制されることになりました。
②B型肝炎ウイルスの感染拡大
集団予防接種等が強制されたことで、日本国内では、さまざまな感染症のまん延を防ぐことができました。
一方で、集団予防接種等の管理体制には問題があり、注射器(注射針や注射筒)の使い回しが行われていたのです。
集団予防接種等において、B型肝炎ウイルスへの感染を防ぐためには、注射針はもちろん、注射筒も被接種者(予防接種を受ける人)ごとに交換する必要があります。
しかし、国は早い段階でこの事実を認識していたにも関わらず、対策を行わなかったのです。
国が被接種者ごとの注射針の交換を指導したのは1958年、注射筒の交換まで徹底する完全な対策を行ったのは1988年になってからのことでした。
そのため、本来は感染症を防ぐための予防接種をきっかけに、B型肝炎ウイルスへの感染が拡大してしまったのです。
③感染被害者の方による訴訟の提起
1989年、勇気ある5名の感染被害者の方が、国の責任を追及する訴訟(裁判)を起こしました。
17年にもおよぶ長く厳しい争いの結果、2006年6月に原告である5名の方々は国の損害賠償責任を認める最高裁判所の判決を勝ち取ります。
これをきっかけとして、全国のさまざまな地域で続々とB型肝炎に関する集団訴訟が提起されました。
④B型肝炎の給付金に関する法律の施行
集団訴訟を経て、2011年6月28日には、感染被害者の方全員を対象とした救済に向けて、国と原告団・弁護団の間で認定要件や金額などを取り決めた「基本合意書」が成立しました。
さらに2012年1月13日には、「特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法(特措法)」が制定されました。これが、「B型肝炎の給付金制度」の始まりです。
このようにして、国はようやくB型肝炎ウイルスへの感染被害を発生・拡大させた責任を認め、感染被害者の方の救済に向けて動きだしたのです。
⑤給付金の請求期限の延長
2012年1月13日に「特措法」が施行された際、B型肝炎給付金の請求期限は2017年1月12日(施行日から5年間)までとされていました。
しかし、2016年5月の時点で提訴者(訴訟を提起した方)の数は、政府が見込んでいた救済対象者の数(約40万人以上)に遠くおよばなかったのです。請求期限は2021年まで(5年間)延長されました。
さらに、2021年1月末の時点でも数多くの未提訴者がいると考えられたため、請求期限は2027年3月31日まで再び延長されました。
⑥現在までの感染被害者救済の実態
法務省によれば、2025年1月31日時点において、B型肝炎訴訟の提訴者数の累計は13万3,873人、和解が成立した原告数の累計は11万2,783人とされています。
これは、約40万人以上いるとされている感染被害者の方全体からみればごく一部であり、救済はまだまだ道半ばであると言わざるを得ません。
感染被害者の方のなかには、ご自身が給付金の受給対象であることをご存じない方や、いまだにB型肝炎ウイルスに感染していることを知らずに過ごされている方が大勢いらっしゃるのです。
B型肝炎訴訟で給付金を受け取れる対象者の方
以下の要件に当てはまる方は、B型肝炎訴訟を提起し国と和解することで、給付金を受け取れます。
B型肝炎給付金の対象者別の受給要件
| 受給対象者 | 受給要件 |
|---|---|
| 一次感染者 |
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| 二次感染者 (母子感染者) |
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| 二次感染者 (父子感染者) |
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| 三次感染者 |
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これらの要件を満たす受給対象者ご本人が亡くなっている場合には、ご遺族の方が給付金を請求できます。
B型肝炎訴訟で給付金を受け取る流れ
訴訟を提起しB型肝炎の給付金を受け取る大まかな流れは、以下のとおりです。
必要書類の収集
給付金を受け取るためには、まずご自身が「給付の要件を満たしていること」を証明する書類を集めなければなりません。たとえば、以下のような書類が必要です。
- B型肝炎ウイルスへの持続感染を確認できる血液検査結果
- カルテなどの医療記録
- 母子健康手帳または予防接種台帳 など
このほか、ご状況によっても必要な書類は異なります。
提訴・和解
書類の準備ができたら、訴状を作成し訴訟を提起します。
その後、国が提出された資料を確認し、給付金の支給要件を満たしているか審査を行います。支給要件を満たすことが確認されれば、国との間で和解手続が進められます。
給付金の請求
和解成立後は、「社会保険診療報酬支払基金」に対して、給付金を請求する手続が必要です。
和解調書などの必要書類を提出すると、審査を経て、指定した口座に給付金が振り込まれます。
実際に給付金が振り込まれるまでには、請求から1~2ヵ月程度かかることが多いです。
B型肝炎訴訟で給付金を請求できる期限
現在のところ、B型肝炎の給付金を請求できるのは、2027年3月31日までです。
なお、手続に必要な書類の収集には、時間がかかることも少なくありません。 給付金の額は病態に応じてあらかじめ定められていますが、感染・発症から20年が経過すると、受給できる金額が減額されてしまいます。
そのため、できるだけお早めに訴訟の準備を始めることをおすすめします。
B型肝炎訴訟に関するよくある質問
訴訟から和解までの期間はどれくらいですか?
訴訟を提起してから和解までにかかる期間は、およそ1年半~2年が1つの目安とされています。ただし、収集した資料の量や内容、状況などによっても異なります。
B型肝炎訴訟を起こすデメリットはありますか?
B型肝炎訴訟を起こすデメリットは、以下の2つです。
- 書類取得や検査などに費用がかかる
- 訴訟の準備や手続に手間がかかる
ただし、裁判を起こして国と和解することができれば、B型肝炎給付金とは別に国から検査費用の一部などが支給されます。また、弁護士に依頼すれば、資料収集や書類作成、請求手続などを任せられるため、負担を減らせるでしょう。
B型肝炎訴訟は自分でもできますか?
できます。 ただし、給付金を受け取るにはさまざまな資料を集め、訴訟を提起しなければなりません。 すべてご自身で対応するのは、想像以上に時間や労力がかかります。
そのため、少ない負担でスムーズに給付金を受け取りたいのであれば、弁護士に依頼するのがおすすめです。
まとめ
B型肝炎ウイルスに感染された被害者の皆さまが、給付金という形で救済を受けるためには、国に対して訴訟(裁判)を提起し和解を成立させるという、裁判上の手続が必要です。
「国に対する訴訟」と聞くと身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、B型肝炎の給付金制度では、過去に国と原告団・弁護団との間ですでに基本合意が成立しているため、「国と徹底的に争う」といったものではありません。あくまでも給付金を得るための手続ですので、ご安心ください。
B型肝炎訴訟を起こすためには、資料収集や訴状の作成など、入念な準備が必要です。そのため、B型肝炎の給付金請求をご検討の方は、お早めにアディーレ法律事務所へご相談ください。
弁護士からのメッセージ
何の落ち度もない方々が、B型肝炎ウイルスに感染し、その本当の原因もわからずご本人やそのご家族が辛く苦しい思いをされてきました。その方々を救済するためにB型肝炎訴訟の制度ができました。おひとりで悩まず、気になることはどんなことでもお気軽にご相談ください。皆様の心の支えになれるよう、常にご依頼者様の立場になって考え、B型肝炎訴訟のお手続きをさせていただきます。





