B型肝炎の治療方法は?完治はする?治療費の負担を減らす方法も解説

B型肝炎給付金の請求期限
2027年3月31日です

アディーレ法律事務所 B型肝炎訴訟チーム
 監修 大西 亜希子 弁護士
大西亜希子 弁護士

※本ページの内容は、一般的な情報提供を目的としたものです。個別の治療方針については必ず医師にご相談ください。

B型肝炎は治る?治療の方針・目的

結論から言うと、「急性肝炎」は自然治癒することが多いですが、「慢性肝炎」の場合は完治ではなく「ウイルス抑制による沈静化」を目指すことになります。

以下で詳しく見ていきましょう。

急性肝炎を発症した場合

B型肝炎ウイルス(HBV)に感染すると、20~30%の方は一過性の急性肝炎を発症することがあります。

急性肝炎は、特別な治療をしなくても自然治癒することが多いです。
しかし近年では、慢性化しやすい欧米型ウイルスの増加により、急性肝炎から慢性肝炎へ移行するケースも少なくありません。
そのため、基本的には安静にして対症療法をとりつつ、慢性化していないか慎重に経過観察することが大切です。

なお、急性肝炎を発症した方のうち、1~2%の方は症状の重い劇症肝炎を発症することがあります。
その場合、抗ウイルス薬の投与など、適切な治療が必要です。

劇症肝炎は死亡率が高いとされていますが、適切な治療を受ければ治癒する可能性はあります。

慢性肝炎を発症した場合

B型肝炎ウイルス(HBV)に持続感染し慢性肝炎を発症した場合、現在の医療では「体内のウイルスを完全に排除することは難しい」とされています。

そのため、「完治」ではなく「肝炎の鎮静化」と「肝線維化の改善」を目指すことが、主な治療の目的です。

肝炎の鎮静化

肝炎の「鎮静化」とは、ウイルスの増殖がおさまり、肝臓の炎症が落ち着いた状態を指します。
鎮静化の目安となるのが、体の免疫反応である「セロコンバージョン」という現象です。

B型慢性肝炎における「セロコンバージョン」とは、HBe抗原が陽性(+)から陰性(-)に変わり、HBe抗体が陰性(-)から陽性(+)に変わることをいいます。
これは、免疫機能の働きによってウイルスの増殖が抑え込まれ、HBe抗原に対する抗体が作られた状態を意味します。
ただし、ウイルス自体が体内から排除されたわけではありません。

セロコンバージョンが起こると、多くの場合、B型肝炎ウイルスの活動は抑え込まれ、肝炎が鎮静化します。

ただし、セロコンバージョンが起きたあとも、慢性肝炎が再燃したり、肝硬変や肝がんに進展したりするケースがあることも明らかとなっています。
そのため、定期的な検査による経過観察がとても大切です。

肝線維化の改善

「肝線維化」とは、慢性的な炎症によって肝細胞の破壊と修復が繰り返される過程で、正常な肝組織が線維組織である瘢痕(はんこん)に置き換わっていく現象です。

肝組織の線維化が進むと、慢性肝炎や肝硬変へと進行し、場合によっては肝がんを発症します。
そのため、線維化の進行度合い(ステージ)を正確に把握し、改善を目指すことが治療の重要な目的となります。

線維化のステージは治療方針を決める基準にもなるため、主に以下の方法で調べます。

検査の種類 内容
血液検査 線維化マーカー(ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン、血小板数、FIB-4 index、M2BPGiなど)を調べる
画像検査 腹部エコー、CT、MRI、エラストグラフィなどで肝臓の状態を確認する
病理組織学検査 肝生検により肝臓の組織を一部採取し、顕微鏡で直接調べる

B型慢性肝炎の主な治療方法

B型慢性肝炎の治療の柱となるのは、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス療法」です。

また、状況に応じ、肝炎の進行を遅らせる「肝庇護療法(かんひごりょうほう)」が選択されることもあります。
なお、過去には「免疫賦活療法(めんえきふかつりょうほう)」が単独で行われることがありましたが、現在ではほとんど用いられていません。

それぞれの治療方法について、以下で詳しく見ていきましょう。

抗ウイルス療法

抗ウイルス療法とは、薬によりウイルスの増殖を抑えることを目的とした治療法です。
B型慢性肝炎の場合、主に抗ウイルス療法を中心に治療を行います。

なかでも、経口薬の「核酸アナログ製剤」と注射薬の「インターフェロン製剤」「ペグ・インターフェロン製剤」による治療が一般的です。

核酸アナログ製剤

核酸アナログ製剤は、B型肝炎ウイルス(HBV)の増殖を抑え、肝炎を沈静化させるための経口薬の一つです。
医師の管理のもとで使用され、ウイルスの増殖を強力に抑える効果があるとされています。なお、薬剤によって副作用の傾向は異なります。

一方で、使用をやめると急激にウイルスが増殖し、肝機能障害を進行させるおそれがあります。そのため、医師の診断に基づいて、服用を続けることが重要です。

日本では現在、以下の3剤が使用されています。

  • エンテカビル(商品名:バラクルード)
  • ラミブジン(商品名:ゼフィックス)
  • テノホビル(商品名:テノゼット、ベムリディ)

このうち「ラミブジン」は、かつて広く使用されてきたアナログ製剤です。

しかし、投与をやめるとウイルスが再活発化し、肝機能が悪化することが多いため、長期投与になる可能性が高い薬です。
また、長期投与により、ラミブジンへの耐性を持ったB型肝炎ウイルス(ラミブジン耐性株)が出現することがあります。

そのため現在は、初めて核酸アナログ製剤を使う場合、抗ウイルス作用が高く、耐性株の出現頻度がラミブジンより低い「エンテカビル」や「テノホビル」の使用が推奨されています。

インターフェロン製剤、ペグ・インターフェロン製剤

インターフェロン(IFN)とは、人間の細胞がウイルスやがん細胞などの異物に反応して分泌するタンパク質のことです。ウイルスや腫瘍細胞の増殖を抑制する効果があります。

本来、インターフェロンは体内でわずかしか作られません。
そこで、薬として投与することで、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス作用」と、免疫力を高めてウイルスの活動を抑える「免疫賦活作用(めんえきふかつさよう)」を引き出すことができます。

インターフェロンによる治療は、従来、週に複数回の注射が必要でした。
しかし、現在では薬効成分が長く血中にとどまるよう改良された「ペグ・インターフェロン」が主流となっています。

これにより、従来は週3回だった注射が週1回で済むようになり、通院などの負担軽減につながりました。

肝庇護療法

肝庇護療法(かんひごりょうほう)とは、薬により肝臓の炎症を抑え、肝炎の進行(線維化)を遅らせることを目的とした治療法です。

肝庇護療法にはウイルスの増殖や活動を直接抑制する抗ウイルス効果はありません。
しかし、抗炎症作用があるため、肝機能を保つために利用されることがあります。

肝庇護療法に使われる主な薬剤は、「グリチルリチン製剤」や「ウルソデオキシコール酸」などです。

グリチルリチン製剤

グリチルリチン製剤は、ALTやAST(肝臓の状態を示す血液検査の数値)の値を下げ、肝機能を改善するための注射薬です。
副作用が原因でインターフェロンが使用できない方や、重度の肝機能障害(肝硬変など)の方などは、グリチルリチン製剤を使用することがあります。

ただし、グリチルリチン製剤を投与した場合も、副作用(血液中のカリウムの低下、血圧の上昇、むくみなど)が出るおそれがあります。
また、血管内注射(静脈注射)であるため、通院も必要です。

ウルソデオキシコール酸

ウルソデオキシコール酸は、肝臓の血流を促進し、肝細胞を保護するための経口薬です。
B型慢性肝炎に限らず、さまざまな慢性肝疾患の肝庇護(肝細胞の保護)を目的として使われます。

経口薬であるため、グリチルリチン製剤と比べ、使用しやすいというメリットがあります。

(参考)免疫賦活療法

免疫賦活療法(めんえきふかつりょうほう)とは、患者自身の免疫力によってウイルスの増殖を抑え込むことを目的とした治療法です。
体内の免疫反応を活発化(賦活化)させ免疫力を高めることで、「セロコンバージョン(肝炎の鎮静化)」を促します。

B型慢性肝炎においては、過去に「ステロイド離脱療法」や、「プロパゲルマニウム製剤」の投与などによる治療が行われていました。

しかし、これらの治療法は一時的に肝炎が重症化するリスクがあることや、より安全で効果の高い新薬が登場したことなどから、現在ではほとんど用いられていません。

B型慢性肝炎の治療にかかる費用

B型慢性肝炎の治療にかかる費用は、治療方法や内容、医療機関などによっても異なるため、一概にいくらとは言えません。
一般的に、B型慢性肝炎の治療は長期にわたり続ける必要があるため、治療費も高額になることが多いです。

たとえば、核酸アナログ製剤の1錠あたりの薬価は、薬の種類やメーカーによって異なり、70円〜900円前後です。
核酸アナログ製剤は1日1錠内服する必要があるため、保険適用後の3割負担で計算した場合、1ヵ月(30日)あたりの薬代の目安は約650円~8,000円となります。

また、(ペグ)インターフェロンの投与をする場合、3割負担で1ヵ月あたり3万円以上かかることも少なくありません。

このほか、病院での診察代や、定期的な検査費用もかかります。

B型慢性肝炎の治療費の負担を減らす方法

このように、B型慢性肝炎の治療は、費用の負担が大きくなることも多いです。
しかし、以下のような方法で治療費の負担を軽減できる可能性があります。

  • 医療費の助成を申請する
  • 高額療養費制度を利用する
  • B型肝炎の給付金を請求する

それぞれ詳しく解説します。

医療費の助成を申請する

国や各都道府県は、「肝炎治療特別促進事業」のもと、高額になりがちなB型肝炎の抗ウイルス治療(インターフェロン治療・核酸アナログ製剤治療)にかかる医療費を助成しています。

この制度を利用すれば、世帯の所得に応じて、治療費の自己負担限度額が月額「1万円」または「2万円」まで軽減されます。

世帯の市町村民税(所得割)年額 自己負担限度月額
235,000円以上 2万円
235,000円未満 1万円

医療費助成の対象者

医療費助成の対象となる可能性があるのは、以下の条件に当てはまる方です。

  • B型肝炎のインターフェロン治療および核酸アナログ製剤治療を行う方
  • 公的医療保険に加入している方

詳細な基準については、お住まいの自治体のホームページなどをご確認ください。

医療費助成の申請方法

B型肝炎の医療費助成は、お住まいの都道府県が指定する窓口(保健所や市区町村窓口など、自治体によって異なる)に以下の書類を提出することで申請できます。

必要書類

書類名 入手場所
肝炎治療受給者証交付申請書 都道府県のホームページ
医師の診断書 病院
世帯全員の住民票 市町村役場
世帯全員の市町村民税(所得割)課税非課税証明書 市町村役場
加入医療保険が確認できるもの
  • 「資格情報のお知らせ」の写し
  • 「資格確認書」の写し
  • マイナポータルの「資格情報画面」を印刷したもの

※一部の自治体ではマイナンバーの情報連携により住民票や課税証明書の提出を省略できる場合もあります。

なお、個別のご事情によっては、このほかにも書類が必要な場合があります。
詳しくは、お住まいの自治体やお近くの保健所などにお問い合わせください。

【注意点】

核酸アナログ製剤は長期服用を前提とした治療であるため、医療費助成の認定期間(受給者証の有効期間)は原則として1年間となっています。
継続して助成を受けるためには、毎年更新手続が必要です。

高額療養費制度を利用する

B型肝炎の治療には、保険が適用されるのが一般的です。
しかし、自己負担額が高額になった場合は、「高額療養費制度」の対象となる可能性があります。

高額療養費制度とは、病院などに支払った1ヵ月間(月の初めから終わりまで)の金額(※)が「自己負担限度額」を超えた場合に、超えた分の金額が支給される制度です。

※入院時の食費負担や差額ベッド代などは除く。

高額療養費制度の対象者

高額療養費制度の対象となるのは、以下の条件に当てはまる方です。

  • 公的医療保険に加入している方とそのご家族(被扶養者)
  • 1ヵ月間に診療を受けた医療費(保険適用分のみ)が自己負担限度額を超えた方

「自己負担限度額」は、年齢や所得によって異なるため、詳しくは、ご加入の健康保険や厚生労働省のホームページなどをご確認ください。

高額療養費制度の利用方法

高額療養費制度は、ご自身が加入している医療保険に「高額療養費支給申請書」を提出することで利用できます。

病院の領収書など、ほかにも書類が必要な場合もあるため、詳しくは加入されている医療保険にご確認ください。

B型肝炎の給付金を請求する

治療にかかる費用そのものを助成する制度とは別に、B型肝炎の給付金制度があります。

「B型肝炎の給付金」は、過去の集団予防接種等が原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方を救済するために、国から賠償金として支払われるお金です。

対象者の方は、病態に応じ50万円~最大3,600万円の給付金を受け取れる可能性があります。

B型肝炎給付金の対象者

B型肝炎給付金の対象となるのは、主に以下の条件を満たす方(一次感染者)です。

  • 昭和16年7月2日から昭和63年1月27日までに生まれている
  • B型肝炎ウイルスに持続感染している
  • 満7歳になるまでに集団予防接種またはツベルクリン反応検査を受けている
  • 集団予防接種等以外の感染原因がない

このほか、一次感染者から母子感染・父子感染した方(二次・三次感染者)、相続人の方も対象となる可能性があります。

給付金対象者可能性のチェックはこちらから給付金対象者可能性のチェックはこちらから

B型肝炎給付金の請求方法

B型肝炎の給付金は、必要書類を集めたうえで訴訟を提起し、国と和解することで受け取れます。

以下は、給付金請求に必要な書類の一例です。

  • B型肝炎ウイルスへの持続感染を確認できる血液検査結果
  • カルテなどの医療記録
  • 母子健康手帳または予防接種台帳 など

このほか、ご状況によっても必要な書類は異なります。

必要書類の精査や訴訟の手続には、複雑な判断や法的知識が必要です。
そのため、B型肝炎の給付金を請求するのであれば、弁護士に依頼し、手続を任せることをおすすめします

B型肝炎の治療に関するよくある質問

B型肝炎の治療について、よくあるご質問にお答えします。

B型慢性肝炎の治療期間はどのくらいですか?

B型慢性肝炎の治療期間は、病態や症状、治療方法によって異なるため、一概にはいえません。

たとえば、インターフェロン治療を行う場合、24~48週間の投与が必要です。
また、核酸アナログ製剤の内服をする場合は、基本的には長期間飲み続ける必要があります。

B型慢性肝炎は症状がなくても治療が必要ですか?

B型慢性肝炎と診断された場合、症状がなくても、肝硬変や肝がんへの進行を防ぐために定期的な検査や治療が必要となるケースが多いです。

B型肝炎の治療をしながら仕事を続けられますか?

症状がない場合や、治療による副作用がない場合、働き続けることは可能でしょう。
ただし、副作用が出た場合や症状が悪化した場合、仕事を制限するなどの配慮も必要になる可能性があるため、医師などとよく相談することが大切です。

なお、B型肝炎などの肝疾患をはじめとする病気の治療と仕事の両立支援について、厚生労働省によりガイドラインなどが作成されていますので、参考にしてみてください。

まとめ

B型慢性肝炎は、現在の医療では完治が難しいとされている疾患です。
そのため、主にウイルスの増殖や肝臓の炎症を抑え、病態を進行させないように治療を行います。

しかし、長期にわたり治療を続ける必要があるため、治療費が高額になることも少なくありません。

そこで、医療費助成や高額療養費制度などを利用することも検討するとよいでしょう。
過去の集団予防接種等が原因でB型肝炎ウイルスに感染した場合は、「B型肝炎給付金」を受け取れる可能性もあるため、ご自身が対象となるか確認してみることをおすすめします。

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