B型肝炎の給付金を受け取るためには、資料を集めたり、訴訟を起こしたりと手間がかかります。
手間がかかるからこそ、やるべきことをやったのに給付金を受け取れないという結果にはしたくないですよね。
そこで今回は、B型肝炎の給付金を受け取れないケースについて詳しく解説していきます。実は給付金を受け取れるケースについても紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
B型肝炎の給付金はどのようにして受け取る?
国に対してB型肝炎訴訟を起こし、和解することで、給付金を受け取ることができます。
B型肝炎訴訟とは、幼少期に受けた集団予防接種等において注射器が連続使用され、それが原因でB型肝炎ウイルスに持続感染された方が、国に対して損害賠償を求める訴訟です。
B型肝炎訴訟で和解するためには要件があり、詳しくは本ページの「B型肝炎の給付金を受け取れない方とは?」でご紹介しています。
B型肝炎訴訟で和解する確率
依頼者の方からB型肝炎訴訟を起こした場合の和解確率を聞かれることもありますが、残念ながら、答えることは難しいといえます。
法務省の出しているデータによると、令和4年1月31日現在、累計で9万6,974人の方が訴訟を起こしており、そのうち7万7,101人の方が国と和解し、B型肝炎訴訟の給付金を受け取られています。
「9万6,974人のうち、7万7,101人が和解しているから、和解の確率は、79.5%なのでは?」と考えられそうですが、これは実際の和解の確率とはいえません。
訴訟を起こした9万6,974人のなかには、和解不成立の方だけでなく、和解の見込みはありますが、まだ和解に至っていない方も多く含まれるためです。
そのため、和解の確率を答えることは、簡単にはできないのです。
B型肝炎の給付金を受け取れない方とは?
ここでは、一次感染の方で給付金を受け取れない方について見ていきます。
B型肝炎訴訟における一次感染とは、満7歳になるまでに集団予防接種等を受けたことにより、B型肝炎ウイルスに持続感染した場合を指します。
そして、B型肝炎の給付金を受け取れない方とは、これから紹介している要件に”当てはまらない”方です。詳しく見ていきましょう。
要件1:集団予防接種等によりB型肝炎ウイルスに感染した
満7歳になるまでに受けた集団予防接種および、ツベルクリン反応検査(これらを合わせて集団予防接種等と言われています)における注射器の使い回しにより、B型肝炎ウイルスに感染された方が給付金受取りの対象となります。
以下のような要因でもB型肝炎ウイルスに感染する可能性がありますが、集団予防接種等以外の原因が、感染の原因だと判断された場合には給付金を受け取ることはできません。
感染経路の例
- 性交渉
- 輸血・臓器移植
- 刺青・ピアスの穴あけ
- 剃刀などの使い回し
- 昭和16年7月1日以前生まれの母親や父親からの母子感染や父子感染※
など
なお、感染原因について上記の原因が思い当たるとしても、医療記録(カルテ)や血液検査などで感染原因を調べていくと、ご自身が思っていた原因と異なり、やはり幼少期の集団予防接種等が原因だとされることは多々あります。
そのため、まずは弁護士にご相談されるのがよいと思います。
※昭和16年7月1日以降生まれの母親や父親からの母子感染や父子感染の方は給付金の支給対象となる可能性があります。詳しくは母子感染でもB型肝炎給付金を受け取れる?要件や給付金額は?弁護士が解説をご覧ください。
要件2:B型肝炎ウイルスに持続感染している
B型肝炎ウイルスの感染には、感染が一時的で免疫機能によりウイルスが体外へ排出される一過性の感染と、長期間継続してB型肝炎ウイルスに感染状態を維持する持続感染の2つがあります。
そして給付金支給の対象者は、B型肝炎ウイルスに”持続”感染している方のみで、一過性の感染の方は、B型肝炎給付金を受け取ることができません。
ご自身が持続感染者であるかを調べる手段として、1または2のいずれかの方法があります。
B型肝炎ウイルスの持続感染について検査を受けられる医療機関の一部は、以下のページで紹介しています。
要件3:満7歳を迎えるまでに集団予防接種等を受けた
満7歳を迎えるまでに集団予防接種等を受け、それによりB型肝炎ウイルスに感染した方が給付金支給の対象となります。
免疫機能が未発達な6歳までの間に、B型肝炎ウイルスに感染しなければ、原則として持続感染しないとされたためです。
そのため、満7歳を迎えてから初めて集団予防接種等を受けた方は、給付金を受け取ることはできません。
要件4:一定の期間中に集団予防接種等を受けた
昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までに集団予防接種等を受けた方が、給付金受取りの対象となります。
予防接種法が施行された昭和23年7月1日から、国が注射筒を1人ごとに取り替えるよう指導した昭和63年1月27日までが国の責任期間とされるためです。
該当する期間中で、満7歳になるまでに集団予防接種等を受けていない方は、給付金制度の対象外となります。
要件5: B型肝炎ウイルスがジェノタイプAe以外であること
B型肝炎ウイルスには、ジェノタイプAやジェノタイプBという遺伝子型(ジェノタイプ・ゲノタイプ)がいくつか存在します。
さらに細かいサブジェノタイプもあり、ジェノタイプAには、ジェノタイプAaとジェノタイプAeがあります。
免疫抑制剤による再活性化等を除き、原則として満7歳になるまでにB型肝炎ウイルスに感染していなければ持続感染しないとされています。
しかし、ジェノタイプAeのB型肝炎ウイルスに感染した場合には、満7歳以降の感染であっても持続感染することがあります。
ジェノタイプAeは、平成8年以降に日本で感染が確認された遺伝子型であるため、B型肝炎ウイルスのジェノタイプがAeであった場合には、成人後感染により持続感染した可能性があります。
そのため、満7歳までに集団予防接種等で持続感染したものと認められず、手続の対象外とされています。
実はB型肝炎給付金の支給対象となる可能性のある方
ここまでは、B型肝炎給付金を受け取れないケースについて解説してきました。
一方で、実はB型肝炎給付金を受け取ることができるようなケースも存在するので、以下で詳しくご紹介していきます。
二次感染・三次感染によりB型肝炎ウイルスに感染された方
集団予防接種等において、B型肝炎ウイルスに持続感染された一次感染の方についての要件を見てきました。
実は、一次感染の方だけでなく、一次感染の方から母子感染・父子感染された二次感染の方や、二次感染の方から母子感染・父子感染された三次感染の方も給付金を受け取れる可能性があります。
なかでも、特に多い母子感染による二次感染の方が給付金を受け取るための要件は、以下のページで解説しています。
無症候性キャリアの方
B型肝炎ウイルスに持続感染しており、症状が出ていない無症候性キャリアの方も、要件を満たしていればB型肝炎給付金の受取りが可能です。
感染から20年経過した場合の無症候性キャリアで和解した場合、給付金だけでなく、受給者証(特定B型肝炎ウイルス感染者定期検査費等受給者証)を受け取ることができます。
受給者証の提示により、B型肝炎ウイルスや肝機能に関する血液検査や肝疾患予防のための超音波検査など一定の検査を自己負担なくお金の心配をせずに定期的にそれらの検査を受けられるようになります。
定期的にB型肝炎ウイルスや肝機能に関する検査を受けておくことで、万が一症状が出てしまった場合でも早期発見することができ、重症化のリスクを下げることに繋がります。
B型肝炎患者のご遺族の方
B型肝炎ウイルスに感染されたご本人がすでにお亡くなりになっている場合、ご遺族の方が訴訟を起こすことで、給付金を受け取れる可能性があります。
ご遺族の方の給付金請求を行う場合、残された資料のみで手続を行う必要があり、患者であるご本人が請求する場合とは異なる点もありますので、弁護士に相談されたほうがスムーズに進めることができると思います。
アディーレには、以下の体験談でご紹介しているように、ご遺族の方の給付金請求を行い、和解した実績があります。
相談は無料ですので、ご遺族の方で、給付金請求をしようと考えている方はぜひ一度ご相談ください。
B型肝炎の給付金はいくら受け取れる?
B型肝炎給付金の支給額は、症状によって異なり、あらかじめ以下のように定められています。
症状 | 給付金(20年経過前) | 給付金(20年経過後) |
---|---|---|
・死亡 ・肝がん ・肝硬変(重度) |
3,600万円 | 900万円 |
肝硬変(軽度) | 2,500万円 | 現に治療を受けている方等 →600万円 上記以外の方 →300万円 |
慢性肝炎 | 1,250万円 | 現に治療を受けている方等 →300万円 上記以外の方 →150万円 |
無症候性キャリア | 600万円 | 50万円 +和解後の定期検査費用等 |
上記の表で触れている20年経過とは、以下の日付から数え始めることになります。
無症候性キャリアの方
- 一次感染者の場合は集団予防接種等を受けた日等
- 母子感染の場合は出生日等
- 父子感染の場合は満7歳の誕生日の前日、B型肝炎ウイルスへの感染を確認した日のうち早いほうの日
病気を発症している方
- 病気を発症した日(肝がん、慢性肝炎の再発時とする場合もある)
- B型肝炎ウイルスに起因して亡くなられた方については亡くなられた日
支給されるお金は給付金だけではない
B型肝炎訴訟を行って和解が成立した場合、国からの給付金はもちろんですが、それ以外にも次のような支給(訴訟手当金)があります。
- 訴訟にかかる弁護士費用(給付金額の4%)
- B型肝炎ウイルス感染者であることを確認するための検査費用
・父親のB型肝炎ウイルス検査費用
・母子感染を証明することができた場合の母親との塩基配列比較検査費用
・父子感染を証明するための父親との塩基配列比較検査費用
・ジェノタイプ検査費用(ただし要件あり)
など
このように、訴訟のための金銭的サポートも充実しており、弁護士としても、一人でも多くの方に給付金を受け取ってほしいという思いがあります。
自己判断で給付金の請求をできないと決めつけず、まずは弁護士に気軽にご相談ください。
B型肝炎訴訟を弁護士に依頼すると負担が減ります
B型肝炎給付金を受け取る場合に、訴訟を起こすという手順を踏むことは避けられません。
しかし、難しいことが多そうと感じたり、裁判所に出向くのが大変そうと感じたりする読者の方もいらっしゃると思います。
B型肝炎訴訟を起こす際、弁護士に依頼することで、弁護士によっては医療記録や戸籍などの資料を代わりに収集してもらったり、訴状の作成などご自身では難しいと思うことを任せたりでき、裁判所への出廷も代わりに行ってもらうことができます。
アディーレは資料収集の代行・サポートも行っています
アディーレにB型肝炎訴訟をご依頼いただければ、依頼者の方の負担となる書類の作成や裁判所への出廷はもちろん、資料収集の代行・サポートを受けることができます。
一部の資料については、ご自身で用意していただくことになりますが、以下のような資料収集は、原則アディーレの弁護士に任せることができます。
- カルテなどの医療記録
- 戸籍・戸籍の附票
- 小学校の卒業証明書など満7歳になるまでに日本に居住していたことを示す資料
- B型肝炎ウイルスに感染していることを証明するための血液検査結果※
- 亡くなられたお母さまや年長のごきょうだいの血液検査結果※
など
※過去にこれらの血液検査を受けていることがある場合
また、依頼者の方ご自身で集める必要のある書類についても、収集方法についてのアドバイスや、見つからない場合には代替資料の提案をさせていただきますのでご安心ください。
まとめ
B型肝炎給付金を受け取れない方について解説してきました。 一次感染の方が給付金を受け取る要件は以下のようになっており、当てはまらない項目が一つでもある場合、B型肝炎給付金を受け取ることができません。
- 集団予防接種等でB型肝炎ウイルスに感染した
- B型肝炎ウイルスに持続感染している
- 満7歳を迎える前に集団予防接種等を受けた
- 昭和23年7月1日から昭和63年1月27日までに集団予防接種等を受けた
- B型肝炎ウイルスがジェノタイプAe以外である
B型肝炎給付金を請求したいとお考えの方は、アディーレに相談してみませんか?
何度相談しても無料ですし、オンライン相談も可能ですので、ご自身が対象であるかわからないという方もお気軽にご相談いただけます。
監修者情報

- 資格
- 弁護士,行政書士(有資格),肝炎医療コーディネーター※
※地域により名称が異なります。 - 所属
- 東京弁護士会
- 出身大学
- 香川大学法学部,広島修道大学法科大学院,早稲田大学大学院法学研究科(修士課程)
何の落ち度もない方々が、B型肝炎ウイルスに感染し、その本当の原因もわからずご本人やそのご家族が辛く苦しい思いをされてきました。その方々を救済するためにB型肝炎訴訟の制度ができました。おひとりで悩まず、気になることはどんなことでもお気軽にご相談ください。皆様の心の支えになれるよう、常にご依頼者様の立場になって考え、B型肝炎訴訟のお手続きをさせていただきます。