B型肝炎ウイルスのキャリア(HBVキャリア)とは?感染力や治療の考え方
B型肝炎給付金の請求期限は
2027年3月31日です

監修 丹野 卓真 弁護士

B型肝炎ウイルスのキャリア(HBVキャリア)とは?
B型肝炎ウイルスのキャリア(HBVキャリア)とは、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染したあと、ウイルスが排除されないまま体内に残り続けている(持続感染)状態の方を指します。
免疫機能がすでに発達している成人がHBVに感染した場合、免疫の働きによってウイルスが排除されることが多いです。
しかし、乳幼児期や免疫機能が低下している時期にHBVに感染すると、ウイルスを排除することができず、キャリア化してしまいます。
「HBVキャリア」のなかでも、肝炎を発症していない状態を「無症候性キャリア(むしょうこうせいキャリア)」といいます。
また、肝炎を発症しておらず、ウイルスの増殖も抑えられている状態を「非活動性キャリア(ひかつどうせいキャリア)」といいます。
無症候性キャリア(むしょうこうせいキャリア)
無症候性キャリア(むしょうこうせいキャリア)とは、B型肝炎ウイルスが体内に潜伏した状態が続いているものの、肝炎を発症していない状態のことです。
出生時の母子感染や乳幼児期の集団予防接種などでB型肝炎に感染した場合、免疫機能が未発達なためウイルスを排除できず、多くの方が「無症候性キャリア」となります。
B型肝炎における無症候性キャリアの方は、原則として免疫機能が未発達な幼少期には肝炎を発症しません。
しかし、成長に伴って免疫機能が発達すると、HBVに対する免疫反応が起こるため、肝炎を発症する可能性があります。
非活動性キャリア(ひかつどうせいキャリア)
非活動性キャリア(ひかつどうせいキャリア)とは、B型肝炎ウイルスは体内に潜伏しているものの、ウイルスの増殖が抑え込まれ、肝機能が正常に保たれている状態です。
非活動性キャリアの方の場合、原則として特別な治療は必要ないとされています。
ただし、非活動性キャリアの状態でも、免疫機能を抑える治療(抗がん剤やステロイドの投与など)を行うと、ウイルスの増殖が再開(再活性化)し肝炎を発症するおそれがあります。
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)の経過
B型肝炎ウイルスに感染したあと、キャリア化した(感染状態が一定期間続いた)場合、大まかに以下のような経過をたどります。

※『B型肝炎治療ガイドライン』、『B型肝炎(詳細版)』、『これだけは知っておきたい B型肝炎ガイド 医学生向け』をもとに独自に作成
参考:
免疫寛容期(めんえきかんようき)
出生時や乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染した場合、約90%の方はHBVキャリアとなり、まず「無症候性キャリア」の期間を過ごします。
この無症候性キャリアの期間を、「免疫寛容期(めんえきかんようき)」といいます。
無症候性キャリアの状態では、ウイルスは活動しているものの、免疫機能が未発達のためウイルスを攻撃できず、肝炎の症状が現れません。
無症候性キャリアの状態が続く期間は、人によって数年から20年以上などさまざまです。
免疫応答期(めんえきおうとうき)
成人を迎え免疫機能が発達すると、「免疫応答期(めんえきおうとうき)」に入ります。
免疫応答期には、ウイルスに感染している肝細胞を免疫機能が攻撃するため、結果として肝炎の症状があらわれることがあります。
具体的には、無症候性キャリアの方の約10~15%が肝炎を発症し、慢性肝炎や肝硬変などへ進行する可能性があるとされています。
低増殖期(ていぞうしょくき)
免疫機能の働きによってウイルスの増殖が抑え込まれ、肝炎が沈静化した場合、「低増殖期(ていぞうしょくき)」に移行し、「非活動性キャリア」の期間を過ごします。
乳幼児期にB型肝炎ウイルスに感染し「無症候性キャリア」となった方のうち、約85%~90%は「非活動性キャリア」へ移行するとされています。
また、慢性肝炎を発症した方でも、治療や免疫機能の働きによりウイルスの増殖が鎮静化すれば、「非活動性キャリア」となることもあります。
非活動性キャリアの状態になると、ウイルスの増殖が抑え込まれ、肝機能が正常に保たれるため、特別な治療をせずに日常生活を送れるようになります。
ただし、まれにウイルスの増殖が再開(再活性化)し肝炎を発症するおそれもあるため、定期的に経過観察をすることが大切です。
寛解期(かんかいき)
非活動性キャリアからさらに状態が安定し、臨床的な「治癒」に近い状態となると、「寛解期(かんかいき)」に移行します。
この状態になると、血液検査でHBs抗原が検出されなくなり、肝炎が再燃するリスクは低くなります。
ただし、慢性肝炎を経てHBs抗原が消失した方でも、肝がんが発生するリスクは残るとされており、引き続き定期的な検査を受けることが重要です。
また、肝臓の細胞内にはウイルスの遺伝子が微量に潜伏し続けているため、免疫力が著しく低下した場合、再びウイルスが活動を始める「再活性化」のリスクがゼロではない点には注意が必要です。
B型肝炎ウイルスの「キャリア」と「既往感染」の違い
B型肝炎における「既往感染」とは、過去にHBVに感染したものの、免疫機能によってウイルスが体内から排除された(または微量に抑え込まれた)ことで、実質的に「治癒した」状態です。
この状態では、日常生活のなかでウイルスが他人に感染することは基本的にないとされています。
一方で「キャリア」はウイルスが体内に潜伏している状態です。
そのため、血液や体液に直接触れると、傷口のある皮膚や粘膜を介してウイルスが他人に感染する可能性があります。
なお、既往感染であっても肝臓のなかにウイルスのDNA自体は残ります。
そのため、免疫を抑制するような治療(ステロイドや抗がん剤の投与など)を行った場合に、ウイルスが増殖する「再活性化」のリスクは完全にはなくなりません。
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)の感染リスク
B型肝炎ウイルス(HBV)は、主にHBVキャリアの方の血液や体液が、傷口のある皮膚や粘膜に触れることで感染します。
一方で、空気感染や飛沫感染はしないとされています。
そのため、血液や体液に直接触れることがなければ、日常的な接触(握手など)やせき・くしゃみなどによって感染することはありません。
なお、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染力は、血液中のウイルス量によって異なります。
「非活動性キャリア」の場合は、ウイルス量が少なくなっている状態のため、他人に感染させるリスクは比較的低くなります。
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)の検査と治療
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)の検査方法や治療方針は、以下のとおりです。
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)の検査方法
HBVキャリアであるか(または過去にHBVキャリアだったか)どうかは、医療機関で検査を受けることで調べられます。
まずは、「HBs抗原検査」によって、現在ウイルスに感染しているかどうかを調べます。
「HBs抗原」が陽性(+)の場合、「現在ウイルスに感染している」ということです。ただし、キャリア(持続感染)かどうかまではわかりません。
また、「HBs抗原」が陰性(-)の場合、「現在はウイルスに感染していない(検査ではウイルスが認められない)」ことを意味します。
しかし、「過去にキャリアだった(持続感染していた)」可能性はあります。
そのため、より詳しい検査で「HBc抗体」などを調べることで、現在HBVキャリアであるか(または過去にHBVキャリアだったか)を判断します。
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)の治療方針
HBVキャリアの方の治療方針は、肝炎を発症しているかどうかによって異なります。
肝炎を発症していない「無症候性キャリア」や「非活動性キャリア」の場合、原則として積極的な治療は行わず、定期的な検査を受けながら経過観察を続けることになります。
一方で、「慢性肝炎」を発症している場合は、肝硬変や肝がんへの進行を防ぐための適切な治療が必要です。
B型慢性肝炎の治療においては、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス療法」が柱となります。
なかでも、経口薬の「核酸アナログ製剤」と注射薬の「インターフェロン製剤」「ペグ・インターフェロン製剤」による治療が一般的です。
B型肝炎ウイルスキャリアの方が受け取れる可能性のある給付金
国は、過去の集団予防接種等が原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した方(その方から母子感染した方や、ご遺族なども含む)を対象に、B型肝炎の給付金制度を設けています。
受給要件に当てはまる方は、訴訟を提起し国と和解することで、病態や感染・発症からの経過年数に応じて50万円~最大3,600万円の給付金を受け取ることが可能です。
B型肝炎給付金の受給対象者
B型肝炎の給付金の対象となるのは、以下の受給要件を満たす方です。
| 受給対象者 | 受給要件 |
|---|---|
| 一次感染者 |
|
| 二次感染者 (母子感染者) |
|
| 二次感染者 (父子感染者) |
|
| 三次感染者 |
|
集団予防接種等が原因でB型肝炎ウイルスに持続感染した「一次感染者」の方だけでなく、母子感染・父子感染による「二次感染者」、「三次感染者」の方も対象です。
また、受給対象者ご本人が亡くなっている場合には、ご遺族の方が給付金を請求できます。
B型肝炎給付金の金額
B型肝炎給付金の金額は、病態や感染・発症の時期などによって以下のように定められています。
B型肝炎の病態別の給付金額
| 病態 | 発症後(※) 20年が経過していない |
発症後(※) 20年が経過している |
|---|---|---|
| 死亡・肝がん・重度の 肝硬変 |
3,600万円 | 900万円 |
| 軽度の肝硬変 | 2,500万円 | 【現に治療を受けている方等】600万円 【上記以外の方】300万円 |
| 慢性肝炎 | 1,250万円 | 【現に治療を受けている方等】300万円 【上記以外の方】150万円 |
| 無症候性キャリア | 600万円 | 50万円+和解後の定期検査費用等 |
※無症候性キャリア(非活動性キャリア)の方は、集団予防接種等後または出生後
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)に関するよくある質問
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)に関するよくある質問にお答えします。
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)になると必ず肝炎を発症しますか?
HBVキャリアだからといって、必ず肝炎を発症するわけではありません。
HBVキャリアの方のなかには、ウイルスを体内に持っていても肝炎を発症しないまま長期間安定して過ごせる方も多くいらっしゃいます。
一方で、肝炎を発症し、慢性肝炎や肝硬変、肝がんへと進行する場合もあります。
肝炎を発症するかどうかは個人差があるため、症状がなくても定期的に検査を受けることが大切です。
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)が注意すべきリスクはありますか?
HBVキャリアと診断されると、「将来の健康や寿命に影響するのでは」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、非活動性キャリアの方は、肝炎の活動が抑えられている状態のため、経過は比較的安定しているとされています。
一方で、肝がんが発生するリスクはゼロではないため、注意が必要です。
特に、40歳以上でウイルス量が多い方、肝臓の線維化が進んでいる方などは、リスクが高いとされています。
そのため、定期的に検査を受けながら経過を見ていくことが大切です。
B型肝炎ウイルスキャリア(HBVキャリア)は治りますか?
HBVキャリアとなった場合、現在の医療では「体内のウイルスを完全に排除することは難しい」とされています。
無症候性キャリア・非活動性キャリアも、体内からウイルスが完全になくなったわけではないため、「完治した」状態ではありません。
そのため、慢性肝炎を発症した場合などには、完治ではなく「ウイルス抑制による沈静化」を目的に治療を行います。
まとめ
B型肝炎ウイルスのキャリア(HBVキャリア)とは、ウイルスが体内に潜伏し続けている状態です。
症状が出ないまま経過する方も多い一方で、時間の経過とともにウイルスが再び活動し、慢性肝炎や肝硬変、肝がんへ進行する場合もあります。
そのため、症状が出ていなくても「自分は大丈夫」と自己判断せず、定期的に医療機関で検査を受けることがとても大切です。
過去の集団予防接種等が原因でB型肝炎ウイルスに感染し、HBVキャリアになった方は、国から給付金を受け取れる可能性があります。
アディーレ法律事務所では、「B型肝炎給付金の対象になるか知りたい」という方からのご相談を何度でも無料で承っております。ぜひお気軽にご相談ください。





